横領による退職や懲戒解雇、刑事手続きを経験すると、「もう再就職できないのではないか」「過去を話せば採用されないのではないか」と不安になるものです。収入が途絶え、弁済や生活費まで抱えている場合は、焦りから事実を隠したくなることもあるでしょう。
横領した人の再就職は、簡単だとは言えません。ただし、過去を隠す方法を探すより、現在の法的な状況、弁済の進み具合、再発防止の取り組みを整理し、虚偽のない就職活動を続けるほうが、長期的な再建につながります。
大切なのは、反省の言葉を重ねることだけではありません。金銭を直接扱わない仕事を選ぶ、借金や依存の問題に対処する、第三者の支援を受けるなど、同じ問題を繰り返さない環境を作る必要があります。
横領した人の再就職が難しくなる理由

横領歴がある人の再就職では、実務能力だけでなく、信用面や再発の可能性について厳しく見られやすくなります。とくに金銭、商品、顧客情報、会社資産を扱う仕事では、採用側が大きな不安を抱くことがあります。
一方で、過去の事実だけですべての応募先が同じ判断をするとは限りません。担当する業務、処分や刑事手続きの状況、現在の生活、弁済、再発防止策などによって、受け止め方は変わります。
再就職を「過去を許してもらうための活動」と捉えるのではなく、「再び問題を起こさないために何を変えたかを伝える活動」と考えることが大切です。
企業が採用時に不安を感じるポイント
企業が抱きやすい不安は、過去の横領行為そのものだけではありません。採用後に同じ問題が起きないか、社内の規則を守れるか、経歴の説明に偽りがないかといった点も見られます。
| 不安を感じやすい内容 | 採用側が確認したいこと |
|---|---|
| 再発の可能性 | 原因を理解し、具体的な対策を取っているか |
| 経歴の信頼性 | 退職理由や在籍期間について虚偽がないか |
| 金銭へのアクセス | 現金や会社資産を任せても問題がないか |
| 責任への向き合い方 | 被害や元勤務先への責任を軽く扱っていないか |
| 就労の継続性 | 安定して勤務を続けられる生活状態か |
「深く反省しています」と伝えるだけでは、採用側の不安を十分に減らせない場合があります。弁済を継続している、家計を第三者と共有している、依存の治療や相談を続けている、金銭管理を伴わない仕事を選んでいるなど、現在の行動を説明できる状態が必要です。
懲戒解雇・前科・空白期間の影響を整理する
横領後の状況は、人によって異なります。自主退職した人、懲戒解雇を受けた人、逮捕や起訴に至った人、有罪判決を受けた人では、応募前に確認すべき内容も変わりますまずは感情や記憶だけで判断せず、現在の状況を事実として書き出してください。
- 退職時の状況
↳自主退職、合意退職、懲戒解雇などの区分 - 社内処分の内容
↳通知書や合意書に書かれている条件 - 刑事手続きの状況
↳逮捕、起訴、判決、執行猶予、保護観察などの有無 - 弁済の状況
↳被害額、支払済みの金額、今後の支払予定 - 就業に関する条件
↳保護観察や会社との合意による制限の有無 - 離職後の期間
↳空白期間中に行った治療、相談、就労準備など
履歴書にどこまで書くか、応募先から賞罰や退職理由を聞かれた際にどう答えるかは、書類の形式や個別の状況によって変わります。自分だけで判断せず、判決書、処分通知、退職時の書類などを用意し、弁護士や支援機関へ確認してください。
再就職を始める前に準備すべきこと
横領後の再就職では、求人へ応募する前に、法的な状況と再発の原因を整理する必要があります。面接の練習だけを進めても、弁済や金銭問題、依存、生活の乱れが残っていれば、働き始めた後に再び不安定になる可能性があります。
準備の中心になるのは、責任を果たすための行動、生活費の確保、再発を防ぐ環境づくりです。一度にすべてを解決するのではなく、専門家や家族、支援者と役割を分けながら進めましょう。
弁済状況と法的な条件を専門家へ確認する
就職活動を始める前に、弁済、刑事手続き、就業上の条件を確認してください。思い込みで判断すると、応募時の説明や就職後の勤務に影響することがあります。最初に整理したい内容は、次のとおりです。
- 被害額と弁済済みの金額を確認する
- 今後の支払日と支払額を書き出す
- 判決や保護観察の条件を確認する
- 元勤務先との合意内容を読み直す
- 応募書類や面接で迷う点をまとめる
- 弁護士や関係機関へ相談する
弁済を続けながら生活するには、無理のない収支計画も必要です。手取り収入をすべて弁済へ回して生活が破綻すると、借金や新たな金銭問題につながる恐れがあります。
横領歴がある人の仕事選びと応募方法
応募先を選ぶ際は、過去と同じように金銭や会社資産へ直接触れる仕事を避けることが基本になります。最初から高い待遇や大きな権限を求めるより、管理された環境で勤続実績を作るほうが、信用を積み直しやすくなります。
横領の説明と仕事上の能力は分けて考えてください。過去の行為について責任をもって説明しつつ、作業経験、体力、対人対応、パソコン操作、業界知識など、応募先で生かせる能力も別に伝えます。
金銭管理を避けて経験を生かせる職種を探す
仕事選びでは、採用されやすさだけでなく、再発の可能性を下げられるかを確認します。経理、出納、集金、売上金管理、口座管理など、金銭へ直接アクセスする業務は避けたほうがよい場合があります。
- 現金を扱わないか
↳レジ、集金、出納などの担当がない仕事 - 口座や送金権限を持たないか
↳振込や支払い処理へ直接関わらない業務 - 商品や資産を単独管理しないか
↳在庫や備品を一人で管理しない仕組み - 複数人で確認する体制があるか
↳作業や記録を相互確認できる職場 - 相談先が明確か
↳困ったときに上司や担当者へ報告しやすい環境
職種名だけで安全だと判断するのではなく、実際の業務内容まで確認します。倉庫作業でも高額商品や在庫管理を担当する場合があり、事務職でも請求や支払いを扱うことがあります。
履歴書や面接では虚偽を避けて事実を説明する
履歴書や面接では、採用されるために事実を変えたり、質問された内容をごまかしたりしないことが大切です。説明の食い違いが後から分かると、過去の行為とは別に、現在の誠実さまで疑われる恐れがあります。
横領に関する説明は、長い弁解にせず、次の順番で整理すると伝えやすくなります。
- 起きた事実を簡潔に伝える
- 自分の責任を認める
- 弁済や謝罪など現在の対応を伝える
- 原因に対する再発防止策を伝える
- 応募先で守る働き方を伝える
説明を作る際は、元勤務先の管理体制や周囲の態度を理由にして、自分の責任を薄めないようにします。背景を話す必要がある場合でも、「環境が悪かったから仕方がなかった」という内容にならないよう注意が必要です。
たとえば、回答の骨組みは次のように整えられます。
「前職では、私が会社の金銭を不正に扱い、退職に至りました。自分の行為に責任があると受け止めています。現在は弁済を続けるとともに、金銭管理を一人で行わない生活へ改め、専門家への相談も継続しています。再び同じ問題を起こさないため、現金や口座へ直接触れない仕事を希望しています。入社後は報告と確認を徹底し、担当業務を着実に続けます。」
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まとめ|責任と再発防止を行動で伝えながら再就職を目指そう
横領した人の再就職は、過去を隠す方法を探すことから始めるのではありません。退職時の処分、刑事手続き、弁済、保護観察、空白期間などを事実として整理し、分からない点を弁護士や関係機関へ確認することが出発点です。
横領に至った原因も振り返り、借金、依存、生活困窮、孤立、ストレスなどへ対処する必要があります。現金や口座へ直接触れない仕事を選び、家計を第三者と共有するなど、再び問題を起こしにくい環境を作ってください。
履歴書や面接では、質問された内容へ事実の範囲で答えます。過去の説明は、事実、責任、現在の対応、再発防止、今後の働き方の順番で整理すると、感情的な弁解になりにくくなります。



